概要

猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)は猫腸コロナウイルス(FECV)が変異したもので、その猫腸コロナウイルスは猫の80%が感染しているとも言われています。

なお、この猫腸コロナウイルス(FECV)はアルファコロナウイルス属で、ベータコロナウイルス属である新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)には関係していません。

また、猫腸コロナウイルスが人に感染して諸症状を発症することは無いとされています。

猫が猫腸コロナウイルスに感染すると下痢を引き起こすことがありますが、正しい対処をすれば重篤な症状にはならないと言われています。

しかし、猫腸コロナウイルスが猫の体内で猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異すると様々な症状が出ます。

症状

・ウェットタイプ

体重減少・元気減退・発熱等の症状とともにお腹や胸に水が溜まり、腹水や胸水が肺を圧迫することにより呼吸困難などの症状を起こします。

・ドライタイプ

体重減少・元気減退・発熱等の症状とともに眼にぶどう膜炎や虹彩炎などの症状を起こしたり脳内に炎症を起こし神経症状を起こします。腎臓や肝臓・腸にも異常が現れることがあります。

どちらのタイプも発熱や食欲低下などの初期症状があります。発病した場合の死亡率が非常に高いとされています。

治療法

完全に治す治療法はありません。※1

実際の治療としては、抗生物質や抗炎症剤などを用いた対症療法を行いネコちゃんの症状を緩和してあげることが主体となります。

※1 アメリカでウェットタイプに有効とされる治療薬が開発されましたが、まだ治験薬のため、日本で扱っている動物病院は極稀、もしくはまだ無いと思われます。

〈2024年10月29日 追記〉

最近まで猫伝染性腹膜炎(FIP)に対する有効な治療法は確立されておらず、ステロイド剤で炎症を抑える、猫インターフェロン製剤の注射でウイルスを抑える、免疫抑制剤で過剰な免疫を抑制するなどの対症療法が中心でした。
この方法では症状の改善や延命にある程度の効果は示すものの、最終的にはほぼ100%亡くなってしまうため、猫伝染性腹膜炎(FIP)はずっと「不治の病」とされてきました。
しかし、近年ではGS-441524などを使用した治療実績が多数報告されており、早期に適切な治療をすれば治る病気になりました。

猫伝染性腹膜炎(FIP)についてまとめた記事を作成しました。FIP治療薬についても記載しています。
https://note.com/nekoplus/n/na654fff2873b#7cf9e813-5d99-4ae6-9720-15810fed9675

予防方法

有効なワクチンはありません。※2

猫腸コロナウイルスが猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異する原因と言われているストレスや他のウイルス感染を防ぐことが予防につながると考えられています。ストレスのかからない快適な環境を作り、室内飼いに徹しましょう。

※2 アメリカで生ワクチンが開発されていますが、その有効性ははっきりわかっておらず、日本では使用されていません。

まだ不明な部分が多い猫伝染性腹膜炎。有効なワクチンや治療薬の完成が待たれます。