概要
眼の奥にある光や映像を感じ取る部分(網膜)が変性・萎縮してしまい、正常な機能を果たさなくなる病気です。遺伝性の疾患と考えられており、両眼に発生し、徐々に進行して最終的には失明してしまいます。
早期発症型と遅発型があり、早期発症型ではかなり早期に暗い環境での視力が著しく落ちます。
遅発型では、1歳以降に発症し、進行も遅く、失明も生涯の後期に起こる例もみられます。
進行性網膜萎縮症では、初期は夜盲(やもう)といって、暗い環境下での視力が著しく低下することが多いです。
初期は夜盲のみで、昼は目が見えているので、視力の低下に気付きにくいでしょう。
症状
初期は夕方〜夜の時間帯に目が見えにくくなります(夜盲)。暗い場所を怖がったり、音に対して敏感になったり、おもちゃを追う遊びをしなくなったり、高いところに登らなくなったり、物にぶつかったり、段差につまずいたりするようになります。症状が進行すると日中も目が見えなくなり、夜間と同様に視力低下の症状が起こります。生後2〜3週齢で視力の障害が確認される早期発症タイプと、生後1歳半〜2歳齢で発症する晩期発症タイプがあります。
主な対象猫種
・アビシニアン
・オシキャット
・オリエンタル
・コーニッシュレックス
・シャム
・ノルウェージャンフォレストキャット
・ペルシャ
・ベンガル
・メインクーンキャット
・ラグドール
予防
予防方法はありません。
遺伝性の疾患なので、万一この病気を発症した場合は、繁殖に使用しないことで今後この病気の発症率を下げることができるでしょう。
現在見つかっている遺伝子変異が全てとはいえず、見つかっていない遺伝子変異が発症することも考えられます。
猫ちゃんの様子を日頃からよく観察し、おかしい様子があれば、早めに動物病院に行きましょう。
治療法
一度発症すると、最終的に失明に至り、視力を取り戻すことはできません。
補助的治療として、網膜の変性(変化)を抑えることを目的として、ビタミンEの投与が行われることがあります。
猫は、視覚だけでなく、嗅覚や聴覚を使って生活しています。失明しても視覚以外の感覚を使って、ある程度視覚の喪失を補います。
猫ちゃんが失明した後にできる工夫としては、次のものがあります。
・ごはんや水の場所を変えない
・ごはんなどは口元に持って行き、気付きやすいようにする
・猫の動線上に物を置かない
・家具の配置をすっきりさせる
・家具の角に保護剤を付ける
・目が見えないと危ないエリアに入れないようにゲートを付ける
進行性網膜萎縮症と同様に盲目の症状が現れるほかの病気も多数あります。猫の進行性網膜萎縮は非常に稀な病気と言われており、盲目がある場合は進行性網膜萎縮を第一に疑わず、そのほかの病気を含めて総合的に診断を受けることが大事だと思います。